■ PHOTO/TEXT:廣海 緑朗
徳島で見た、生きたソーシャルコミュニティー
2020年4月に開業した徳島県上勝町ゼロ・ウェイストセンター[WHY]。上空から見ると巨大な「?」マークを象ったインパクトのある建物で、全世界のソーシャル活動家の間で話題になりました。真のゼロ・ウェイストを志す上勝町の分別は現在13種類45分別。既に再資源化を8割も達成しています。たとえばガラス瓶でも、透明、茶色、その他の色と3種類に分けるなど。町民はセンターで仕分けながら捨てているため必然的に滞在時間は長くなり、それがまた良い効果を生んでいるとのこと。ひとり暮らしや高齢者の人たちにとっては、ここが交流の場にもなり、町民の一体感が生まれるなど、仕組みだけが先行するのではなく、受け皿であるコミュニティーが成熟していることが評価されています。
2003年に日本の自治体としては初めてのゼロ・ウェイスト宣言を行うに至った同町ですが、1991年にはコンポスト購入の補助制度がつくられるなどいち早くゴミの問題に目をむけていた事がわかります。1994年に「リサイクルタウン計画」を策定するなどを経て、1998年には既に分別の種類が25種類だったというから驚きです。持ち込み式の回収センターを導入する事で、高齢者や車を持たない方を助け合う風土も早くに生まれていました。ボランティアグループが「ごみを持って行ってもらう人」と「ごみを持って行く人」を募集して、同じ集落内で組み合わせを行うなど、強いつながりを感じとる事ができます。
「どうしてもリサイクルできないものもあり、10数%は埋め立て処分にせざるを得ません」と話してくれたのは運営主体であるBIG EYE COMPANYの大塚桃奈さん。「そもそもゴミをどう処理するかではなくて、ゴミ自体を出さない社会を目指したい」という言葉が印象的でした。[WHY]の名前に込められた、社会への問題提起。このセンターを通じて、生産や販売と消費の関係、ひいては私たちの暮らしそのものを考え直すヒントを頂いたような気がします。地方や田舎などと言われて切り捨てられようとしたマイクロソーシャルを見直し、都市部にもその機能や価値を取り戻せるのではないかと感じた徳島の旅でした。
廣海 緑朗
ひろみろくろう
1965年東京生まれ、15歳から京都に。ソーシャルメイトキュレーター。企業のブランディングやコンサルティング業務、イベントやSDGs情報発信などを事業とする「NPO法人みんなの地球のくらしかた」代表。京都近郊の有機農家と八百屋をつなぐ団体「京都オーガニックアクション」理事。アート&音楽&クラフト&食のイベント「ツクル森」オーガナイザー。
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