「コミュニティ・バンク」が描く豊かな街
京都市役所の向かい側、河原町御池南東角に[QUESTION(クエスチョン)]というビルがあります。実はこちらは京都信用金庫の河原町支店。耐震補強のために建て直されました。信用金庫なのに、入口にATMも受付カウンターもない!?という一風変わった様にも思えるビルの狙いを、立役者のひとり、京都信用金庫の理事長・榊田隆之さんに聞きました。
つながりが 街を耕し、動かしていく
── 日々の生活の中で「これってどうにかできないんだろうか」「これとこれを組み合わせたらどうなるんだろう」…などという “問い” を持ったことはないでしょうか。[QUESTION]にはそんな問いが日々集まってくるといいます。 「1人では解決できないことも、みんなで寄ってたかってその問いについて考えてみる。そんな人と人との有機的なつながりをたくさん作ることで、地域は豊かになっていくのではないか」。
理事長・榊田隆之さんをはじめとする京都信用金庫のメンバーたちはそんな仮説を立てて、このビルを作ったそうです。 [QUESTION]は地上8階、地下1階の合計9フロアで構成されていますが、そのうち京都信用金庫が金融業務を行うフロアは6階のみ。その他のフロアはコワーキングスペースやセミナールーム、イベントスペース、コミュニティキッチンなど“人が寄ってたかれる”空間が広がっています。
「実はこのビルは私たちが20年以上前から積み重ねてきたビジョンを可視化したものです。この場所でたくさんの人が出会ってつながり、そのつながりで0から1を生み出せたら…、と私たち自身も日々ワクワクしています」。
オープンからはや2年。今では持ち込まれた“問い”が毎週のように“集い”へと変わり、大学生から企業人まで様々な人たちが関わるオープンイノベーションによって、何かの“種”が誕生しています。
マネーを起点にしてはいけない
スタートとゴールは 「人と人との心のつながり」
「私たちはコミュニティ・バンクという理念をかかげています。本来、地域のためにあるべき信用金庫は、草の根を支える生活者や企業の皆さんと目線を合わせ、地域を豊かにしていくことを目指すべきです。豊かさとは経済的な豊かさもさることながら、それにも増して、日本のような成熟社会では心の豊かさが重要。
そう考えた時、私たちがとった行動は “マネー” からいったん離れることでした。だからバンクフロアは1Fではない」。お金をスタートとゴールにした場合、共感や共助の心が生まれにくいのではないか。そう考えた京都信用金庫のメンバーは、まず、人と人とをつなごうと考えたのです。
[QUESTION]で “問い“ を投げかけると、コミュニティマネージャーと言われるスタッフが「じゃあ、あの人に聞いてみましょう」とつないでくれます。良い問いは共感を呼び、共感がつながりを呼び、やがてそれはコミュニティに。共感で結ばれたつながりは人の心を豊かにする。そして、それこそが京都信用金庫の夢「心豊かなコミュニティであふれる街づくり」だと、榊田さんは言うのです。
「お金はいらないとは言いません。何かを実現しようとする時、短期間でスケールアップするためにお金は有効です。しかし、お金が起点ではいけない。スタート、そしてゴールは人と人との心のつながりだと思うのです。このビルができたことで、知らない人に日々出会い、私たちが想像もできないようなテーマで街の人がつながっています。これからも、もっともっと出会いが生まれる場所になっていってくれたらうれしいです。なにしろ、それが昭和46年からコミュニティ・バンクを標榜している私たちの本懐ですから」。
QUESTION
☎075-585-4190
京都市中京区河原町通 御池下る下丸屋町390-2
9:00~21:00(平日)
10:00~18:00(土曜日)
https://question.kyoto-shinkin.co.jp