これからの「おいしい」|ゼロ・フードウェイスト京懐石

SPECIAL CHALLENGE
ZERO FOOD WASTE KYO-KAISEKI

ゼロ・フードウェイスト京懐石へのアプローチ

今回、TSUMUGINO KYOTOでは、京のおもてなしとして欠かせない“食”から未来を考えてみたいと思い、調理工程でまったく廃棄を出さない「ゼロ・フードウェイスト京懐石」を企画。ゴミを一切出さず、栄養も素材を味わい尽くす京懐石コースを美濃吉本店竹茂楼さんにお願いしてみました。

PHOTO:中尾写真事務所 / TEXT:川合裕之

だし殻の鰹と昆布、鮎甘露煮の頭は大根で巻き込んで煮込む。
京都には江戸初期から存在する料理「尾州巻(びしゅうまき)」に。表紙のひと皿に加わる。
美濃吉本店竹茂楼
佐竹洋治
さたけ・ようじ

京懐石「美濃吉」調理総支配人。大学卒業後に南禅寺「瓢亭」にて3年間の板場修行を経て、美濃吉本店竹茂楼厨房に入る。料理番組や、各地方自治体及び各企業の教室で料理を伝えるほか、学生向けの食育授業にも講師として参加。

ゼロ・フードウェイストは難しい?

―― 今回、フードウェイスト(食品廃棄物)をまったく出さない料理に仕立てていただきましたが、難しいと感じられたところなどありましたか?

いえ、実はけっこう簡単ですよ。やろうと思えばいつでもできます。当店は川魚を得意としていますので、今回は私どもらしい京懐石ですが、しっかり修業を積んだ料理人であれば「素材を使い切る」というのは難しいことではありません。もちろんご家庭でできることもたくさんあります。

―― ではなぜ今は素材を使い切る料理があまりないのでしょうか?

ない訳ではありませんが、お客様のご要望も変化していき、ハレの日をおもてなしする料亭としては、食べにくいものにわざわざひと手間をかける料理はほとんどなくなりました。けれど食料が今ほど豊富でない昔は、みんな工夫をして食べていましたけれど…。鱧など味がおいしく喜ばれるものは、骨切などの技術が発達し今でも残っています。でも時代が変わって「ゴミが出ない」にひとつの価値を感じてもらえるなら良いですね。こういうゼロ・フードウェイストの料理って、多分まだ少ないですよね。僕たちが楽しんで作ることで、そしてひとつの趣向としてお客様へご提案する事で、何かが変わるきっかけになればとてもうれしいです。

―― 今回のメニューのなかでどのメニューが家庭でも取り入れられそうでしょうか?

今回、簡単なもので言えば、デザート「いちぢくのコンポート(後述)」。いつもなら捨てている皮を煮詰めてソースに混ぜ、一緒にお出ししています。皮と身は固さや食感が違うので、別々に調理することで食感のバランスを調整しました。皮の部分に栄養の多い野菜や果物がたくさんあります。植物が自然界の中で生き抜くための生命力がつまっているので、本来は全部いただいた方が体に良いのではないでしょうか。羊羹には茶殻を使いました。口当たりを気にされる方が多ければ、フードプロセッサーで細かくしても良いかもしれません。なかなかお家で羊羹は作らないと思いますが、皮や根や軸や茎、そして茶殻のような抽出したエキスしか使用していない食材は調理方法や活用方法を見直すべきポイントだと思います。

そして今回、川魚料理のすばらしさを改めて見直すことができました。小鮎やモロコ、川海老など、頭からしっぽまでそのまま食べられるものが多いので、特別にロスを考慮した工夫をする必要がありませんでした。全部食べるという事は、栄養分も全部いただくことができます。

さらに食材を捨てないための工夫とは?

―― もう少し、食材を捨てないための工夫をお伺いしたいと思います。特に難しい食材はどんなものでしたか?

総じて「硬いモノ」ですね。今回で言えば鯉の頭や骨まで完全に食べられるようにすることが大変でした。ここまでは流石にやったことがない。しかしやってみればできるもので「鯉こく酒粕仕立(後述)」では、鯉の頭と骨を油で揚げて細かく砕き、笹がき牛蒡とともにトッピングに使いました。ちなみに鯉の鱗も油で揚げて南蛮漬にして「鯉の煮凍りゼリー(後述)」へ混ぜ込み使い切りました。
あとは鰻の頭です。当店は川魚が得意なので4時間かけてやわらかく煮詰めましたが、このあたりはなかなか難しい部類に入るかもしれません。圧力なべではトロトロになりすぎて逆に食感が損なわれます。単純に煮詰めると、硬い佃煮になってしまいますので。

―― 今後、おもてなしの未来の姿はどうなっていくと思いますか?

先程の「硬いもの」の話ですが、粉砕機や液体窒素を使えば、とも思いましたが、無理をしなくとも食材の選び方を変えれば良いと思いますし、これからゼロ・フードウェイストの風潮がもっと広まれば、新しい調理器具やテクノロジーが出てくると思います。食品廃棄物を出さないだけでなく、骨や皮までおいしく食べられれば、ミネラル分もバランスよくたっぷり摂れて健康にも良いと思います。

また、ゴミや無駄を全て排除するような事ばかりに注目してはいけないとも思います。たとえば庭に生えている萩を飾って「これは秋の花なんですよ」と一言添え、ご希望であれば持って帰っていただく。花も食材も地球から生まれた恵みだということを感じていただけると、心が豊かになると思います。人の心を豊かにできるのであれば、それはゴミではありません。

今回は調理の工夫でフードウェイストを出さないことに着目しましたが、納品時の包装や、お客様が食べきれる量の調節など、まだまだ考えられる余白があると感じました。一番大切なのは、おもてなしする心であり、これからは料理人がかけるべき“ひと手間”の方向性が少しだけ変わる兆しを感じることができました。

全品紹介
ゼロ・フードウェイスト京懐石 献立

季節を感じさせる鮮やかな先付から始まり、椀、向付、焼き物…と続く京懐石コース。

フードウェイスト(食品廃棄物)を一切出さず、素材を使い切るために、美濃吉本店竹茂楼の佐竹さんが考えられた献立をご紹介します。

1 【先付】

川海老酒盗焼

頭から全て食べられる川海老

鮎なれ寿司

伏見唐辛子

鯉の煮凍りゼリー

煮凍りゼリーの中には揚げて
細かく砕いた鯉の骨と頭も

石伏魚(ゴリ)

松茸と菊菜と鯉鱗の浸し

鯉の鱗もおいしくいただく

2 【椀】


鯉こく酒粕仕立

鯉の頭と骨の揚げ煮、ごぼう、ミョウガ

鯉の骨と頭を砕いてトッピング

3 【向付】

鮎の背越し

岩魚の洗い

岩魚の骨煎餅添え

岩魚の骨と皮の煎餅

4 【焼き物】

鰻白焼

鰻の頭と骨の甘露煮

5【炊き合わせ】

子持ち鮎甘露煮

尾州巻

白葱

糸人参

6 【強肴】

諸子南蛮漬 椎茸 花丸胡瓜

土佐酢仕立

7 【御飯】

鰻蒲焼と数種類の野菜御飯

数種類の野菜の軸やヘタ入り

赤出汁

8 【菓子】

いちぢくのコンポート

干しいちぢくのソース

いちじくの皮もソースに投入

茶殻の羊羹

TSUMUGINO KYOTO

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